こんにちは。今回は、Netflixのおすすめドキュメンタリーシリーズ「サムの息子たち:狂気、その先の闇へ」をご紹介したいと思います。
このドキュメンタリーは、「サムの息子事件」の真相を追う一人のジャーナリストであるモーリー・テリーに焦点を当てた作品です。
テリーは、当時IBMの社内編集者をしていましたが、この「サムの息子事件」に興味を持ち、やがて警察の捜査に疑問を持ち始め、独自の捜査により、この事件には悪魔崇拝やカルトが複雑に絡み合っていることを突き止めます。
テリーは、ジャーナリストとしての捜査や取材を元に、1987年に『究極の悪』を出版し、「サムの息子事件」の独自の見解を世間に知らしめますが、真相にたどりつくことはできなかったばかりか、闇の世界に足を踏み入れてしまったがために、後戻りができなくなり、次第に身も心も滅ぼすこととなっていくのです。
このドキュメンタリーシリーズは、テリーの真相を追求するジャーナリズム精神とその活動の過酷さを描いています。
テリーの追いかけた「サムの息子事件」とは、1976年から1977年にかけてニューヨークのブルックリンで6人の男女が無差別に撃ち殺された凶悪事件です。
犯人は、自分を「サムの息子」と名乗り、新聞社へ挑発的な手紙を送り付けていました。
警察は、被害者たちの共通点が見つけられない無差別殺人をなかなか解決することができず、犯人が野放しになっているニューヨークでは連日、この事件の話題でもちきりでした。
犯人逮捕は、1977年7月。
殺人事件が発生した現場付近で、犬の散歩をしていた女性が不審な男が車に乗り込むのを目撃したことを警察に通報したのをきっかけに、警察は、車のナンバーをつきとめ、「サムの息子」ことデービット・バーコウィッツという24歳の男を逮捕しました。
バーコウィッツの逮捕以前から、目撃証言による似顔絵が警察から公表されていましたが、どれもバーコウィッツとはまったく似ていませんでした。
逮捕されたバーコウィッツは、裁判で「サムという犬に取り憑かれた」などと訳のわからないことを言っていましたが、バーコウィッツの生い立ちが、私生児として生まれ、やっと探し当てた実母にも拒まれたというものだったことから、女性への憎しみを募らせそのストレスとして犯罪を犯していたというのが、警察の見解でした。
バーコウィッツ自身も、この警察の見解を認めたので、「サムの息子事件」は、バーコウィッツの単独犯とされていました。
事件へのマスコミの報道は過熱していて、あることないこと面白おかしく事件を報道していましたが、事件の真相にはあまり関心を示しませんでした。
テリー以外は。
テリーは、事件の真相はもっと別のところにあり、「サムの息子」はバーコウィッツではないという仮説を立てます。
つまり、バーコウィッツの単独犯ではなく、共犯者がいるというものです。
テリーは、ブルックリンに近いヨンカーズ出身で、バーコウィッツもヨンカーズ出身でした。
あるとき、「サムの息子事件」で目撃された容疑者の似顔絵と、犯人が新聞社に送ってきた手紙に書かれた名前をたどると、ある人物に行きつきました。
それは、ジョン・カーという男で、たまたまテリーの同級生の男でした。
その男を調べると、父親の名前がサムで、マイケルという弟がいて、カルト教団の一員だということがわかりました。
このジョン・カーこそが「サムの息子」だという説を裏付けるために、テリーはジョン・カーの周辺を調べ始めます。
さらに、バーコウィッツとカーが悪魔崇拝の儀式に参加していた証拠を見つけます。
この説が世間に知られるようになると、目撃者の中にも、自分が目撃したのはバーコウィッツとは別人だと言う者も出てきて、共犯説が浮上してきますが、ニューヨーク市警は再捜査を拒否します。
テリーは、刑務所にいるバーコウィッツ本人にインタビューもして、事件とカルトとの関係に確信を持ち、前出の本も出版しますが、カルトの壁は高く、闇は深く、真相にたどりつくことはできませんでした。
ドキュメンタリーを見終えての感想は、ジャーナリズムに大切な「視点を変えて事件を見る」ことによって、事件へのカルトの関与という事実が浮かび上がってきたわけですが、カルトの闇が深すぎて、目の前が見えなくなってしまったということだと思います。
カルトの世界が現実とあまりにかけ離れているために、現実世界では、受け入れてはもらえなかったのです。
深入りすればするほど、いろいろな人物や集団や事件が複雑に絡み合うこの「サムの息子事件」の真相にたどりつくのはいつになることでしょう?
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