おすすめドキュメンタリー:「コンフェッション・キラー:疑惑の自供」

映画、ドキュメンタリー

 こんにちは。今回は、Netflixのおすすめドキュメンタリーシリーズ「コンフェッション・キラー:疑惑の自供」をご紹介したいと思います。

 テッド・バンディと同じくらい有名なシリアルキラーとして知られているヘンリー・リー・ルーカスを題材にしたドキュメンタリーです。

 ルーカスは、暴力的で荒れた家庭で生まれ育ったため、犯罪者になるのは不思議ではない生い立ちなのですが、このドキュメンタリーでは、360人以上を殺害した(最終的には600人!)とされていた、ルーカスの自供の多くが嘘であった可能性が高く、未解決の殺人事件を解決して手柄にしたいという捜査を担当したテキサスレンジャーズの保安官とのゆがんだ関係などが捜査を攪乱させ、関わった弁護士や被害者家族などが人生を狂わせていく過程が語られていきます。

 自分が犯してもいない多くの未解決の事件を自供し、ありえない数の殺人を自供したとして有名になったルーカスは、別名「コンフェッション・キラー」(自供の殺人者)と呼ばれています。

 若いころから、強盗などの犯罪を犯しては刑務所に入れられるを繰り返していたルーカスでしたが、1960年にルーカスを虐待し、悪い影響を与えた母親を殺害したのが最初の殺人だと言われています。

 1970年に出所したルーカスは、オーティス・トゥールという女装癖のある男と知り合い、その男の姪である15歳のベッキーという少女に恋心を抱き、行動を共にするようになります。

 その頃、ベッキーとカリフォルニアを旅していたルーカスは、当時の雇い主から、82歳の義理の母親ケイト・リッチの面倒をみるように頼まれ、ルーカスとベッキーはリッチの身の回りの世話をしますが、2人が真面目に仕事をしないことに腹を立てたリッチは、2人を追い出します。

 その後、リッチが行方不明となり、家族がルーカスを容疑者に指名し捜索願を出しますが、リッチは見つからず、ベッキーも行方不明になったことから、その頃テキサスにいたルーカスは容疑者として拘置所に送られることになります。

 拘置所に入れられたルーカスは、リッチとベッキーの殺害を自供、供述通り人骨が見つかり、逮捕されますが、最初の公判で、突然、100人以上を殺害したと証言し、メディア関係も数社入っていた裁判所は驚きに包まれます。

 この突然の大量殺人の情報はメディアを通じて全国に広がり注目を集めることとなります。

 そのころ、ルーカスが入れられていた拘置所のあるテキサス周辺では、未解決の殺人事件がいくつかあり、ヘンリーの可能性が高いとされ、テキサスレンジャーのジム・バウトウェル保安官の管轄の拘置所に移され、嘘の自供を繰り返していきます。

 アメリカ全土で殺人を繰り返した殺人犯を捕まえ、アメリカ全土から未解決事件の解決を依頼され、誇らしげなバウトウェル保安官とストロベリーミルクシェイクとタバコと自由な拘置所暮らしを与えられ、ご機嫌なルーカスの間でゆがんだ関係が結ばれ、捜査が進んでいくことになります。

 日本からも取材班が訪れ、ルーカスとともに殺人現場を案内するという大盤振る舞い!!

 バウトウェル捜査官に乗せられるような形でルーカスが自供したことを信じるとするなら、広いアメリカの各地で殺人を犯すには、眠らずに車で時速80kmで移動しなければならないことになるなど、信ぴょう性が疑われます。

 ルーカスの自供により、次々とアメリカ全土の未解決事件が解決されていくことを、不審に思うダラス警察など司法関係者やメディアの記者は、この捜査に疑いの目を向け始めます。

 偽の報告書や現場写真をルーカスに見せると、ルーカスはありもしな殺人事件を語り出すことを突き止めます。

 司法関係者やメディアから、自供の信ぴょう性を疑われ、しかも、実際には、犯行が地理的に難しいとされる殺人事件で有罪となり死刑判決を受けたルーカスは、自供の撤回をし始めます。

 死刑囚監房へ送られたルーカスは、保安官が事件解決を望んでいたために自供したと認めましたが、時すでに遅しで、しかもバウトウェル保安官は亡くなってしまっていたので、殺人と結びつく証拠は、自供のみであったにもかかわらず、自供の強要があったかどうかも確かめる術はなくなってしまいます。

 死刑執行が迫るなか、死刑判決を受けた殺人事件とルーカスを結びつける証拠は自供しかなく、その自供は閲覧可能の資料に基づき誘導された可能性が高かったため、当時のテキサス州知事であったブッシュ州知事によって終身刑に減刑されます。

 その後、ベッキーが生きているという情報が出たりしますが、ここでも、ルーカスの余計な行動が弁護士を巻き込み、あだとなる結果となります。

 ルーカスは、死刑ではなく、獄中で病死しました。

 ルーカスの嘘に振り回され人生を狂わせた弁護士や司法関係者も気の毒ですが、愛する家族を殺され、ルーカスが犯人だと信じ込んでいた遺族はもっと気の毒です。

 自分たちの手柄のために、ルーカスを犯人に仕立て上げ、事件解決とされた遺族の怒りや悲しみは想像を絶することでしょう。

 ルーカスは、大量殺人は実際には犯していないものの、世間を騒がせたその自供には、大量殺人にも匹敵するほどの破壊力があるのではないでしょうか。



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