今回は、2020年にNetflixで配信が開始されたドキュメンタリーシリーズ「ガブリエル事件」を紹介します。
昨今、幼児虐待の事件を耳にしますが、虐待殺人までに至る密室での壮絶な暴力行為には目をそむけたくなります。
助けを求めたら助けてくれる人がいるし、その助けを求められた大人たちは助けようとしているのに、その声が適切なところに届かない。
なぜこの事件が起こったのか?社会システムが見逃したからなのか?
ドキュメンタリーの内容(ネタばれあり)
2013年5月22日カリフォルニア州パームデールに住む8歳の少年が、少年の母親と父親それぞれから救急要請911に「息子が呼吸をしていない」との通報があり、ロサンゼルス小児病院に運び込まれました。
少年の体には無数の傷とあざや噛み跡やタバコを押し付けられた跡がありました。
少年は、脳死と判定され、2日後の5月24日に死亡しました。
栄養失調とネグレクト、暴力による外傷が原因でした。
少年の名前はガブリエル・フェルナンデス。
母親パールとそのボーイフレンドのイサウロ・アギーレと姉と兄と暮らしていました。
日頃から虐待を受けていましたが、死の約8ヶ月前から虐待がひどくなっていたそうです。
虐待を受けていたのは、ガブリエルだけで、姉と兄は虐待を受けていませんでした。
ガブリエルは、生後3日で母親に捨てられ、叔父のマイケルとそのパートナーの男性に引き取られました。
二人は、ガブリエルを4年間愛情深く育てましたが、2009年ガブリエルが4歳の時から祖父母が育てるようになりました。
ガブリエルの祖父がマイケルとパートナーの同棲関係を快く思っていなかったようです。
2012年には、パールがガブリエルの親権を取り戻します。
パールの狂暴性や育児能力を懸念した家族の反対にもかかわらず、ガブリエルはパールとボーイフレンドのイサウロの元に戻されてしまいました。
ガブリエルの虐待は、警備員や家族や学校の教師などに知られていて、何度も通報されていました。
実際2005年から2012年の間にパールとサウロに関して60件の通報がロサンゼルス郡児童家族サービスに寄せられたそうです。
パールとイサウロによるガブリエルへの8ヶ月にもわたる虐待の様子は、裁判で様々な証言により明らかになります。
ガブリエル事件の裁判は、裁判を担当したハタミ地方検事にとって初の死刑裁判でもあり、幼児虐待で死刑を求刑するのは珍しいケースでした。
パールは、死刑を回避するため、司法取引で罪を認めたことにより、仮釈放なしの第一級殺人で終身刑となりました。
一方イサウロは、無罪を主張し、パールに会うまでは犯罪を犯したことがなく、勤務していた老人ホームでは親切で思いやりもある人だと元上司が証言したことを根拠に死刑を免れようとしますが、
イサウロ自身は、裁判中、下を向き何の反応も示さない冷酷な人間そのものでした。
判決は、第一級殺人で死刑となりました。
この事件では、ソーシャルワーカーも虐待殺人に加担したとして、数名が起訴されましたが、その後、取り下げられました。
まとめ
虐待は、連鎖すると言われています。
母親のパールも虐待され、愛されずに育ったそうですが、だからと言って許されるわけではありません。
ガブリエルを愛情もって育ててくれる人たちがいたのに、なぜ、親権を取り戻し自分のもとに連れ戻したのか?親としての責任感?虐待して殺してしまうくらいなら、人を頼ることをなぜしなかったのか?ガブリエルは、なぜ自分がこんなにひどい仕打ちをされるのかわからなかったと思います。
子供なので、きっと「自分が悪いから」と思っていたかもしれません。どんなにひどいことをされても、母の日にママを幸せにしてあげたいとカードを作っていたガブリエルがあまりにも不憫です。
NASAの「家族の定義」
NASAの「家族の定義」をご存じですか?
NASAには家族支援プログラムという制度があって、宇宙への出発前から地球への帰還まで家族をサポートしてくれます。
このプログラムでは、家族を2種類に分類しています。
1つは「直径家族」
もう1つは「拡大家族」
たとえばシャトルの打ち上げ時は「直径家族」と「拡大家族」の両方とも招待されるが、シャトルに問題が発生した場合にNASAからは「直径家族」にしか連絡がいかない。
シャトルとの交信も「直径家族」が優先される。
「直径家族」とは、
①配偶者(パートナー)
②子ども
③子どもの配偶者
父親も、母親も、兄も、妹も、祖父も最優先される「直系家族」ではなく、拡大家族に分類されます。
出生に関わる血の繋がりではなく、「自分で選んだ相手」こそが、家族だという定義をしているのです。
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