おすすめドキュメンタリー:「殺人鬼との対談:テッド・バンディの場合」2019年

映画、ドキュメンタリー

 こんにちは。今回は、悪名高きシリアルキラーとして知られるテッド・バンディを題材にしたNetflixのドキュメンタリーをご紹介したいと思います。

 1970年代のアメリカは、犯罪が多発する荒れた時代でした。

 動機のない連続殺人も増加していて、その中でも一番世間を震撼させたのがテッド・バンディでした。

 まだ、シリアルキラーという言葉さえなかった時代、誰からも愛される若い女性たちの失踪が続き、遺体となって発見されるという殺人事件が多発していて、後に逮捕されるテッド・バンディは、30人以上の殺害を犯したとされています。

 このドキュメンタリーでは、死刑を言い渡され、フロリダ州立刑務所の死刑囚監房にいるテッド・バンディへのインタビューを通して、テッドの犯行を振り返っていきます。

 このインタビューで、テッドは、自分の犯した行為をどこか他人事のようにとらえているのか、なかなか自分の犯行を語ろうとはしませんでした。

 しかし、インタビューする記者が「第三者の目で話をする」という形式をとったことが突破口となり、数々の犯行とその時の動機などを詳細に語りだしたのです。

 これは、テッドが裁判で自分で自らの弁護をしたことにもつながります。

 幼少時代の話から殺人を犯して自分で弁護をしておきながら、2度の脱獄を成功させ、結局は死刑囚となるまでを饒舌に語るのですが、常に世間をあざ笑っているかのように、自分のやり方を通せて満足しているようでした。

 しかし、殺人の欲求もコントロールできない人間に、自分の裁判をコントロールできるはずもありません。

 裁判中も、自分のことが話題となりマスコミに取り上げられることを楽しんでいて、刑務所でのインタビューなどの映像もたくさんあり、裁判は中継されたほどでした。

 これほど、堂々とマスコミに出た犯罪者は、後にも先にもテッドぐらいでしょう。

 しかし、誰の目からも常軌を逸しているのは明らかなのに、テッドだけは、その自己中心的な欲求が自らを破滅へと導いていることには気づいていないようでした。

 テッドが他の殺人者と違うところは、知的でハンサムで口達者という人を惹きつける魅力があり、本人もそれを自覚していたことはもちろんのこと、もうひとつ特徴的なのが「自分のバックグラウンドには、殺人者になるような要素は何もない」ときっぱり言い切っているいるところです。

 テッドは、父親の顔を知らず生後まもなく母親に生活能力がなかったため、母親から引き離されしばらく乳児院に預けられ、祖父からは虐待を受けていたような形跡もあります。

 また、成人して自分の出生(父親がいない)を知ってショックを受けたりもしているのです。

 多くの殺人者がその生い立ちの不幸さを殺人の原因にしたりするのに、テッドは、自分のバッググラウンドにはあまり関心がないようでした。

 しかし、動物行動学の世界では、生後数日間に母性愛を受けなかった動物は、他の個体と愛情による絆をもつことができなくなることが知られているように、テッドの犯罪者としての人格形成には出生に関わることが大きく影響していると言われています。

 このテッドの動機や目的のない犯行の数々は、新しい犯罪として分析の対象とされ、「シリアルキラー」という言葉は、アメリカでは、このテッド・バンディを指し示す言葉として定義され浸透していきました。


 それまでは連続殺人を犯す人間は「サイコ(サイコパス)」と表現されてきました。

 同じ連続殺人でも、サイコパスが人格面の異常が原因の連続殺人犯を表すのに対して、「シリアルキラー」はより快楽殺人者を表しています。

 金銭や怨恨目的ではないシリアルキラーの殺人事件は、犯人と被害者の接点が見つけられず、極めて捜査が難しいと言われています。

 しかし、殺人そのものを目的とするシリアルキラーは、事件を起こし続けるため、その捜査法として、行動科学を駆使して、犯罪の特徴などを分析して犯人の特徴を推論する「プロファイリング」が確立されたのです。


 ドキュメンタリーの感想としては、その見た目や経歴(それがうそであったとしても)などの先入観に大きく影響されてしまったことと、「シリアルキラー」という言葉としての概念がなかったがために、問題として意識されなかったことが、テッド・バンディというモンスターを作り上げ、犠牲者を増やしてしまったのだと思いました。

 





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