実話を元にした映画:韓国映画編②

映画、ドキュメンタリー

 前回に引き続き実話を元にした韓国映画をご紹介したいと思います。

「梨泰院殺人事件」2009年

 2009年に韓流スターのチャン・グンソクが主演し話題となりました。

 英語しか話せない在韓米軍軍属の息子という役柄でしたが、英語がぎこちなく、現実味があまりなかったです。。。。

 梨泰院(イテウォン)は、ソウル南部の観光地で在韓米軍基地に近く外国人が多く居住する地域です。

 本作は、そんな梨泰院にあるハンバーガーショップで1997年に起きた殺人事件を元にしています。

 1997年4月3日午後10時すぎ、梨泰院の「バーガーキング」のトイレで23歳の大学生チョ・ジュンピルさんが血まみれで死んでいるのが発見されました。

 現場保全がされないまま、店の従業員が掃除をしてしまうなどの初動捜査のミスがありましたが、有力な情報が提供されます。

 当夜、現場のハンバーガー店が入るビルの別の階にあるバーで開かれていたパーティーに参加していた客が、自分の仲間が犯行をほのめかすのを聞いたという内容のものでした。

 この通報によりアーサー・パターソン(映画ではロバート・J・ピアソン)という名の18歳の在韓米軍軍属の息子が警察に連行されます。

 この時、同時に友人のエドワード・リー(映画ではアレックス)という17歳の高校生が「クールなものを見せてやる」とパターソンにトイレに誘われ、犯行を目撃したと出頭してきます。

 事件は、パターソンが在韓米軍軍属の息子で、リーがアメリカ国籍だったことから、複雑になっていきます。

 「米韓地位協定」により、身柄を拘束できるのは、アメリカ軍の犯罪捜査隊(CID)だけでしたが、CIDは初動捜査でパターソンを容疑者として逮捕し韓国に引き渡しているので、「地位協定」の問題より、韓国側の捜査の杜撰さが問題となっていたようです。

 取り調べでパターソンとリーは、お互いに、殺害を実行したのは相手だと言い張り、検察は、状況証拠や噓発見器によるテストの結果や目撃証言などから、パターソンを凶器所持で、リーを殺人罪で起訴します。

 その結果、パターソンは懲役1年から1年6カ月の不定期刑が確定し、すぐに服役、1998年8月に恩赦で釈放されると検察が出国停止の延長をしなかった隙を狙って翌年に米国に逃走してしまいました。

 一方のリーは、1審で無期懲役、2審でも懲役20年が宣告されましたが、最高裁は審理を差し戻し、1999年9月に、証拠不十分で無罪となり釈放されました。

 被害者のジュンピルさんは、貧しい家庭の末っ子の一人息子であり、アルバイトをしながら大学に通っていました。

 理由もなく、息子を殺したであろう犯人のどちらもが自由の身となり、それでも事件解決を訴える家族の思いもあり、事件から10年が過ぎてから作られた本作で描かれているのが、ここまでです。  



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事件のその後

 映画の公開後の2009年、米国に逃走したパターソン被告の所在が把握されたため、韓国側は、米国に犯罪人の引き渡しを請求しました。

 韓国の検察は、事件当時、導入されていなかった遺体解剖の分析や犯行後の足取りから、CIDもパターソンの犯行を確認したと発表しています。

 その後、2011年5月にパターソン被告は逮捕され、翌年10月に米国の裁判所は引き渡しを許可しました。

 最後の悪あがきとばかりに、パターソン被告は人身保護請願を申し立てるなど意図的に時間を稼ごうとしますが、韓国送還が決定されました。

 それを受けて、韓国検察は2011年12月、パターソン被告をあらためて殺人罪で起訴しました。

 時効のわずか4カ月前のことでした(2015年殺人罪の時効は廃止)。

 犯行から20年経過した2017年、韓国裁判所は、アーサー・ジョン・パターソンに懲役20年を言い渡しました。

 これは、事件発生当時未成年だったパターソンに対し韓国裁判所が言い渡すことのできる法廷最高刑だそうです。

 また、無罪となったリーも、ただの目撃者ではなく共犯だとされましたが、無罪判決を受けているため、同じ事案について二度裁判にかけられないという原則(一事不再理)に基づき罪には問われないとのことです。

 

 



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