おすすめドキュメンタリー:「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」

映画、ドキュメンタリー

 こんにちは。今回は、Amazon Primeで視聴できる「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」について紹介したいと思います。

 トルーマン・カポーティという作家の名前を聞いたこともあるし、「ティファニーで朝食を」や「冷血」という作品も知っていましたが、カポーティ自身が、その作品以上に有名だったということにはあまり興味がありませんでした。

 しかし、今回このドキュメンタリーを見て、カポーティという人物にとても興味が沸きました。

 多くの世界的に有名な作家の晩年があまり穏やかではないという例に漏れず、カポーティも晩年は、ドラッグとアルコールに溺れ、テレビ番組に出ては不可解な発言や奇行を繰り返していたので、多くの人にとっては奇人としての印象が強く残っているかもしれませんが、このドキュメンタリーでは、カポーティが養女にしたというケイト・ハリントンという女性が語り手として出てきます。

 ハリントンが養女になったいきさつは、ハリントンの父親(!!)がカポーティの愛人だったというもので、カポーティの破天荒な人生においては、それほど特別なことではなかったようですが、ハリントンにとってはそれまでの人生が一変するような出来事でした。

 このドキュメンタリーでは、娘となったハリントンや関わった人々の目から見たカポーティの真実を知ることができます。

 偉大な作家たちは大体、生い立ちからして普通とは違うのですが、カポーティの場合も、南部の生まれで幼い頃に両親が離婚し、華やかな上流社会にあこがれを持つ母親は、幼い息子を捨てたも同然でニューヨークに行ってしまい、置いて行かれたカポーティ少年は、南部の親戚の家を転々として育ちました。

 母親に見捨てられたことは、カポーティ少年にとって深い傷となりましたが、その代わり、「変わり者だけれど、すてきな」おばさんたちに可愛がられ、大好きな読書もでき、また、アラバマ時代には、後に「アラバマ物語」で有名になるネル・ハーパー・リーと幼なじみという決して不幸な環境ではありませんでした。

 このような環境のなか、早くから作家を志すようになったカポーティ少年は17歳で学校を辞め、「ザ・ニューヨーカー」誌の雑用係として働くかたわら、執筆活動を始めます。

 19歳の頃には、「ミリアム」という作品で賞を受賞し、若き才能ある作家として注目を浴びます。

 人懐っこく、子供のような背格好や顔立ちで、人々が振り返るような少し変わった風貌のカポーティ少年は、まわりにいる人々を魅了し、作家としての出発点からすでにかなり広い交友関係を持っていました。

 その後も、ハリウッドスターや芸術家や富豪が集まる上流社会に身を置き、家族のように親密な付き合いをしていました。

 カポーティが友人たちを頼ったのは、幼いころ母親に捨てられたことに原因があるようです。

 カポーティの母親のリリー・メイ・フォーク(ニーナと呼ばれていた)は、アーチという男と若くして結婚し、カポーティ少年を生みますが、すぐに離婚します。

 南部美人だったニーナは、上流社会のライフスタイルへのあこがれが強く、離婚後、すぐにカポーティ少年を親戚に預け金持ちの男のいるニューヨークへ渡ってしまいました。

 ニューヨークの金持ち男の名前がジョー・カポーティで、カポーティという名前は、この血のつながりのない義理の父親の苗字で、生涯この苗字を名乗りました。

 こうして、上流社会の一員となったニーナは、南部にいた息子をニューヨークに呼び寄せ、一緒に暮らすようになりますが、教育などには無関心であったそうです。

 ニーナとジョーのカポーティ夫妻は、パーティ三昧の日々で、お金を湯水のごとく使っていきました。その結果、経済状況は、破綻していきますが、それを認めない二人は、詐欺まがいの行為を繰り返し、ついには、ジョーが文書偽造と重窃盗罪で逮捕されてしまいました。

 さらに追い打ちをかけるように、母親ニーナが服薬自殺をしてしまいます。

 自分を捨てたも同然の母親でしたが、一方では、上流社会を生き抜くゴージャスな母親を慕ってもいたカポーティは、母親の自殺に大きなショックを受けました。

 一説によると、母親の死をきっかけにベイブ・ペイリー(アメリカの社交界におけるファッションアイコンでその美を絶賛されたセレブ)などの人々とつきあうようになったということです。

 また、上流社会のライフスタイルへの耽溺が母親を滅ぼしたとの思いから、後に、カポーティの人生を狂わせてしまうことになる作品「叶えられた祈り」で、上流社会の人々の恥部を暴露し復讐したのではないかとも言われています(真相は定かではありません)。

※この「叶えられた祈り」の中には、ウィリアム・ウッドワード・ジュニア射殺事件に関するものなどがあります。


 最後に、カポーティと言えば欠かせないのが、「冷血」という作品です。

 1959年のある日「ニューヨーカー」からの仕事の依頼で、カンザス州で起こった殺人事件についてのルポを書くことになりました。

 前述のハーパー・リーに同行してもらい、カンザス州に赴き、実際の捜査官や地元の人たちに接触し、犯人の逮捕前から取材をするというノンフィクション・ノベルという新しいジャンルを生み出しました。

 この取材の様子を書いたジョージ・プリンプトンの「トルーマン・カポーティ」(上)の中で、捜査官が取材に来ている有名作家を滞在先のホテルに訪ねると、カポーティが「ピンクのネグリジェ」で出てきたという記述があり、どこまでもカポーティらしいと思ってしまいました(笑)

 カポーティが取材した事件というのは、カンザス州で農場を営むクラッター一家4人が殺害されるという事件で、逮捕されたのは、ペリー・スミスという31歳の男と、リチャード・ヒコックという28歳の男でした。

 カポーティは、事件を取材をする中で、ペリー・スミスという男に強い関心を寄せることになります。

 インディアンとアイルランドの血を引くスミスは、ずんぐりとしていて背格好はカポーティと同じような感じでした。

 スミスの境遇は、両親は離婚し、親からの愛情はほとんど受けず、4人の兄弟姉妹のうち、兄と姉が自殺してしまうという悲惨なもので、元来、頭が良く、絵を描く才能や音楽の才能があったにもかかわらず、教育をほとんど受けることがなかったため、犯罪の道へ足を踏み外していってしまいました。

 そんなスミスにカポーティが、強い共感を持ったのは、自分の人生も一歩間違えればスミスのようだったかもしれないという恐怖心があったからかもしれません。

 カポーティは、死刑囚となったスミスとヒコックに対し、その不幸な生い立ちがこの凄惨な事件を起こさせたと2人に同情する一方で、死刑が執行されなければ小説が完結しないというジレンマに苦しむことになります。

 最終的には、カポーティは自ら2人の死刑の執行に立ち合い、小説を完結させることになりました。

 作家が死刑囚と心を通わせるとか、その死刑を見届けるとか、まさに 「真実は小説より奇なり」ということになるのだろう。

 ドキュメンタリーもおすすめですが、小説を読むこともおすすめします!

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