おすすめ映画:「希望の灯り」(2018年)

映画、ドキュメンタリー
スーパーの廃棄物のチョコケーキで、マリオンの誕生日をお祝いする粋な(?)演出をするクリスティアン。

 こんにちは。NetflixやAmazon Primeなど、映画のサブスクが一般的になり、観たい映画が次々に配信されるのはいいのですが、数が多すぎて、マイリストに入れておいたことすら忘れてしまうのが常です。

 かれこれ30年くらい前、私が10代の頃は、「ロードショー」や「スクリーン」といった映画雑誌で好きな俳優の映画の公開情報を得て、映画館に観に行くか、ビデオでレンタルして視聴する日を心待ちにしていたものです。

 時代は変わりましたね。見たかった映画がいつでも見ることができて、自分の好みに合う映画をどんどんおすすめしてくれるサブスクの機能は便利でありがたいですが、昔のように、観たい映画を心待ちにしてレンタルビデオ店に駆け込んでいた頃を懐かしく思うこともあります。

 「昔はよかったな」。

 そんなノスタルジックな思いが伝わってくる映画に出会いました。

 2019年に公開されたドイツ映画「希望の灯り」です。

 ストーリーは、旧東ドイツのライプツィヒの近郊にある巨大なスーパーマーケットで在庫管理係として働き始めた訳ありで無口な青年クリスティアン(27歳)が、同じく訳ありだけど心やさしい同僚たちにあたたかく迎えられ、互いに支え合いならが生きていく姿を描いています。

 この映画は、毎日繰り返される日常を淡々と描いているのですが、その中には、30年前の東西ドイツ統一というドイツの歴史的にも重要な変革後に人々の心の中に沸き起こった「オスタルギー」(東ドイツ時代への郷愁)が随所にちりばめられています。

 歴史上、東西ドイツ統一は、東と西の間に存在する壁を崩壊させ、よりよい世界を作ったと語られますが、一方では、変革に置き去りにされ、前に進めない人たちもいるのです。

 「希望の灯り」の舞台である、スーパーマーケットは、旧東ドイツ時代は、トラックの配送センターがあった場所で、東西統一後に、西側資本の巨大スーパーマーケットに変貌しました。

 映画の中で、クリスティアンにとって重要な二人の登場人物の一人であるブルーノ(54歳)は、スーパーマーケットの飲料部門で働いていますが、東ドイツ時代は、配送センターでトラックの運転手として働いていました。

 クリスティアンに仕事でも、プライベートでもやさしく接するブルーノも、変革に置き去りにされた一人です。

 もう一人の登場人物で、クリスティアンが恋心を抱く年上の女性マリオン(39歳)には、夫がいますが、夫婦生活がうまくいっておらず、幸せそうではありません。

 主要な登場人物であるクリスティアン(27歳)とブルーノ(54歳)とマリオン(39歳)という世代が異なる3人が東西統一でどのような影響を受けたのかという視点で映画を見てみると面白いかもしれません。

 クリスティアン(27歳)は、ベルリンの壁の崩壊後に生まれた世代です。

 ブルーノ(54歳)は、東ドイツ時代に青春を過ごし、仕事も家庭も持ったのでしょう。その過程でベルリンの壁の崩壊を経験しています。

 マリオン(39歳)は、子供の頃にベルリンの壁の崩壊を経験し、西側の男性と結婚していると思われます。

 そんな西側資本のスーパーマーケットで働く東ドイツにルーツを持つ3人には、居場所が、職場にしかないという共通点があります。

 それぞれが孤独であるがゆえに、職場であたたかい人間関係を築いていくのです。


 ブルーノのように、東ドイツ時代をなつかしく思うドイツ人は多くいると思いますが、東西統一という歴史を後悔するのではなく、前に進んでいくために、「古き良き時代」があるのだと思います。

 多くを語らない映画ですが、見終わったあと、「久しぶりにいい映画だったな」と思えるような映画でした。

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 「オスタルギー」をテーマにした「グッバイ、レーニン」もおすすめです。

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