こんにちは。前回に引き続き星野博美さんの作品をご紹介したいと思います。
今回、ご紹介する作品は、『戸越銀座でつかまえて』です。
実は、この本を読もうと思ったのは、猫のエピソードがあるからです。
猫との別れを星野さんは、どのように受け止め、どのような言葉で表現するのかが知りたかったのです。
しかし、やはり星野博美さんなのです。
猫との別れが語られる章にたどり着く前の章から共感しっぱなしです。
自由な生き方を選んだ代償(?)として、結婚して子供がいてという同年代の人とは相いれないし、他人と社会的生活を営めない不安定な自分を唯一支えてくれたのが猫たちの存在だったのです。
そんな猫たちが次々と消えていき、精神状態の堤防が決壊してしまいます。
猫との別れは、「そこには、いつも猫がいた」という猫好きなら、泣いてしまうようなタイトルで語られています。
猫には自由を与えなければという思いから、外にも自由に行けるようにしていたくらいなので、その死に対してももっと冷静に見ていたのかなと思っていましたが、看取りの辛さや責任を切々と語っています。
仕事より猫の方が大切になってしまうところなど、思いが重すぎると言う人もいますが、私も同じ「重い」タイプだと思うので、星野さんに言葉で表現してしてもらってありがたいです。
精神状態が決壊して、戸越銀座にある実家に戻る決心をすることになります。
キーワードは、40代、非婚、猫飼い。
自由に生きてきたのは確かだけど、これでよかったのかと日々葛藤するし、そんな生き方は、選択したつもりもないし。
敗北感みたいなものも少しはあるのかもしれませんが、すべて永遠ではないというところであきらめもあるのだろうなと思います(自分がそうだから)。
これまでのエネルギッシュな旅エッセイではなく、疲れた心には抗えない40代のとまどいと悲しみがこのエッセイにはたくさん詰まっていて、共感するところがたくさんあります。
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