いつの時代にも、宗教団体が独自の考えのもとに、一般社会から離れて、独自の社会を築いて活動しているということはよく耳にすることですが、時には、その考えが暴走し、理性を失い、悲劇的な結末を迎えてしまうという事件が起こります。
この「ウェイコ事件」も、一人のカリスマ性のある男が権力を握ったがために、悲劇的な結末を迎えてしまいました。
ウェイコ事件は、1993年にテキサス州ウェイコのマウント・カーメルを拠点にしていた「ブランチ・ダビディアン」という宗教団体がFBIに包囲され銃撃戦となり、51日間の立てこもりの末、FBIの強制突入により、教団施設ごと焼け落ち、多くの子供を含む信者が犠牲となった事件です。
「ブランチ・ダビディアン」という宗教団体は、1930年代に結成され、ヨハネの黙示録による終末思想を思想体系とする教団でした。
教団は、1990年の教祖の座をめぐる争いでメディアが注目するところとなりました。
この争いは、二代目教祖の死後、跡をついだ教祖の息子を銃撃戦の末、教祖の座からひきずりおろすというものでした。
教祖の座を射止めたのが、バーノン・ハウエルというカリスマ性のある若者で、その膨大な聖書の知識と説教のうまさなどで信者からの支持は抜群でした。
バーノン・ハウエルは、後に、「デビッド・コレシュ」と改名し、カリスマ性を発揮して世界中から人々を集めたものの、次第に、支配的となっていき、その変化を信者も感じ取っていました。
教団は、コレシュの命令の下、聖書に記された「ハルマゲドン」に備えるためと急速に武装化していき、銃などの不法取引などでマスコミや司法当局に危険分子としてマークされていったのです。
さらには、元信者からの証言で、コレシュに信者への暴行や虐待などの容疑がかけられていました。
当局がコレシュとたびたび交渉を重ねるも、ことごとく失敗、ついには、信者90人とともに武装し、教団施設に立てこもってしまいました。
立てこもりの様子は、連日、テレビ中継され、人々はその動向を見届けていました。
このドキュメンタリーでは、FBIがコレシュとの交渉を録音したテープも公開されています。
また、コレシュの過去も語られ、社会に居場所のなかった青年が、神の預言者とあがめられ、信者を巻き添えにして自らが終末を迎えてしまうまでが詳細に描かれています。
預言者としての重圧から、自ら終末を招いたとの見方もありますが、カリスマ性のある指導者の洗脳と考えるか、深い信仰と考えるかで、何がこの悲劇を生んでしまったのかについての意見は全く違ってくると思うのです。
当時の教団での生活も見ることができ、なかなか興味深いですが、子供たちの無邪気な笑顔が悲しいです。
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