おすすめドキュメンタリーシリーズ:「ヨークシャー・リッパー猟奇殺人事件の真相」

映画、ドキュメンタリー

こんにちは。今回は、ネットフリックスで配信されている「ヨークシャー・リッパー猟奇殺人事件の真相」について紹介したいと思います。

このドキュメンタリーシリーズは、イギリスのヨークシャー州で1975年7月から5年もの間、女性ばかりが襲われ、最終的には13人が亡くなった連続殺人事件について、

 当時の警察の捜査がいかに女性への偏見の元に行われていたかというフェミニズムの視点から語られています。

この事件で、狙われた女性たちの多くは、夜の街で働く女性だったため、警察やマスコミは1880年代のヴィクトリア朝時代の「切り裂きジャック」をまねた犯行だとして、犯人は「ヨークシャーの切り裂き魔」と呼ばれていました。

事件の始まりは、1975年に夜の街で働く女性たちが無残に殺され遺棄されるという事件が続き、犯行の手口や同じようなタイプの女性を狙っていることから、同一人物による連続殺人事件としてウエストヨークシャー警察で捜査本部が立ち上げられ、捜査が開始されました。

過去に困難な事件を解決してきた世界的に優秀なウエストヨークシャー警察にとって、犯人逮捕は時間の問題と思われましたが、そんな予想は大いに外れ、捜査は難航していきました。

重圧のかかった警察はいくつもの間違いを犯してしまうのです。

手っ取り早く事件解決ができると思っていた警察は、多数の捜査員を動員して、しらみつぶしに捜査をする方法や多額の報奨金で情報を集める方法を試しますが、どれもうまくいかず、でっちあげの情報が多数寄せられ、ますます捜査は困難になり収拾がつかなくなりました。

挙句の果てに、「切り裂きジャック」を名乗る人物から手紙やテープが送られてきますが、それを本物の犯人からだと世間に公表し、投函された場所などをつきとめ、テープに録音された話し方からどの地方のなまりかで犯人を特定できると自信を持っていましたが、手紙もテープも偽物であることが判明しました。

警察が、このような数々の失態を犯してしまった原因として、当時の社会的風潮や情勢を見誤った点が挙げられます。

当時のイギリスは、原油価格の高騰を期にインフレの危機に見舞われ、国民は、賃金を得るのに必死で、ただでさえ事件への関心が薄かったのに、警察の被害女性への偏見で一層人々の関心を薄くしてしまいました。

また、1970年代は、世界的にフェミニズムの高揚とともに、女性の自由が叫ばれた時代です。

イギリスでは、1979年にマーガレット・サッチャー首相が誕生し、女性の地位向上が期待されました。

このような社会的な変化の真っただ中に起こった、女性ばかりを狙った殺人事件でしたが、狙われたのが、夜の街で働く女性ばかりではなかったことから、女性であれば誰もが危険として、警察は、女性に外出制限をかけ女性の自由を奪うことで事件を解決しようとしました。

5年もの間、犯人を野放しにして、女性を危険な目に遭わせてきた警察や世の中の女性差別に対して、女性たちの怒りが爆発しました。

捜査が難航したのは、被害女性たちをまともな目で見ようとせず理解することができない警察に正確な犯人像などイメージすることなどできなかったためでした。

後に逮捕される犯人の男も、幼少の頃から父親が母親に暴力を振るう日常の中で育ってきたため、「女性は常に犠牲者」という環境にいたのです。

「ヨークシャーの切り裂き魔」と名付けられた、犯人の男ですが、犯行の手口が似ていただけではなく、警察がヴィクトリア朝時代の「切り裂きジャック」にヒントを得ようとしていたことから、市民が警察を野次る意味も込められているのだと思います。

40年以上も前の事件ですが、イギリスでは、女性が自分の身は自分で守らなければならないということを実感し、どのように生きるか意識が変わった事件として今でもしばしば取り上げられています。

犯人の男は、2020年11月に亡くなったというニュースが小さく報じられました。

同じくネットフリックスのドキュメンタリーシリーズ「レインコートキラー」も、この事件に似たような事件でした。


コメント

タイトルとURLをコピーしました